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粉瘤

粉瘤(アテローム)とは、表皮などの上皮成分が真皮内に陥入して、それが増殖して角質の塊を含んだ嚢腫(袋)を形成します。けがや摩擦による表皮成分の埋入やヒトパピローマウイルス感染などが関与することもあると指摘されています。

炎症の有無の違い

炎症の有無によっては手術の難易度や術後の見た目、痛みの度合いなどが異なります。

  • 粉瘤が炎症を起こすと被膜を取り出すのが難しくなります。袋が残ると、再発リスクも高くなります。
  • 炎症があると組織が壊死を起こし、周りの組織が治癒されるまで時間がかかってしまいます。そのため色素沈着が起こり、瘢痕が目立って残るのです。瘢痕は組織を縮めながら治癒するので、皮膚がへこむようになります。この皮膚のへこみは、炎症の期間や度合いに比例してひどくなり、解消するのは難しくなります。
  • 炎症があると痛みも強くなります。この痛みは、組織が破壊された結果、炎症した箇所で痛みを起こす物質(ブラジキニン、ATP、プロトン)や感作物質(プロスタグランジン)が作られることで起こります。そのため、手術時に局所麻酔をしても、局所麻酔による痛みを強く感じてしまうのです。またキシロカインも組織の炎症がひどい時は、その部位のpHが酸性に傾いてしまいます。それによって塩基型の麻酔薬の成分が減るため、効果も効きにくくなってします。

粉瘤の原因

粉瘤とは、皮膚の下に垢や皮脂などの老廃物が溜まった袋ができる良性腫瘍です。ヒトパピローマウイルスの感染や皮膚の外傷によってできることもありますが、このようなケースは滅多にありません。ほとんどの場合、原因がはっきりとされずに起こります。
また、粉瘤ができやすい体質もあり、複数できることもあります。粉瘤は放っておくと徐々に大きくなったり、臭いが強くなったりします。また、細菌感染による炎症が起こることもあります。大きく膨れ上がると綺麗に治すのが難しくなるので、早期受診・早期治療が重要です。

炎症を起こす理由

粉瘤は細菌感染によって炎症を起こすと、痛みを伴いながら赤く腫れ上がります。今まで、この炎症は細菌感染によって起こるものだと言われてきましたが、近年のアメリカでは、それ以外の原因で炎症が起こるケースも報告されています。
粉瘤は前述した通り、皮膚の下に袋状のものができ、そこに老廃物が溜まる疾患です。しかし、この袋に圧力がかかった結果、潰れて老廃物が皮膚の内部へ散らばり、炎症反応が起こっているのではないかとも考えられています。このタイプの炎症は、細菌感染による炎症よりも多いとも言われています。
細菌感染による炎症ではない場合は、抗生物質で治すことができません。十分な治療の効果を得るには、迅速な手術が必要です。しかし、細菌感染を伴っている可能性もあるため、抗生物質をお出しすることもあります。
炎症がひどい場合は、炎症が治まるのを待ち、治まった後に手術を行います。

粉瘤の症状

初期の粉瘤はそこまで盛り上がっておらず、小さなしこりとして触れる程度のサイズです。
しかし、排出されない皮脂や角質などが少しずつ溜まるため、徐々に皮膚が膨らんでいきます。
その時、皮膚の開口部に老廃物が蓄積され、膨らんだ部分の中心部に黒い点ができます。
その状態の粉瘤を押すと、臭いカスのようなものが排出されます。初期の粉瘤は数mm程度ですが、大きくなると10cm以上にもなることがあります。
通常の粉瘤は、触っても特に痛くありません。しかし、炎症を起こして化膿すると、痛みを伴います。そのままにすると、粉瘤が破裂してしまいます。
炎症の原因は、細菌感染と異物への反応によって起こっており、特に、皮膚内に漏れ出た粉瘤の内容物(異物)への反応として、炎症が起こっていることが多いとされています。

粉瘤の手術法

当院の手術の特徴

  • 傷跡を最小限にするため、形成外科専門医が手術を担当します
  • スピーディーでかつ丁寧な手術(平均5分~10分程)
  • 痛みを最小限に抑えた手術を提供
  • 粉瘤の状態などによって、くり抜き法か切開法かを選択します
  • 女性のデリケートゾーンの粉瘤も治療できます。女性スタッフが担当するのでご安心ください
  • 院長が手術からアフターケアまで、しっかりとサポートします

紡錘型切除法

昔からある一般的な手術方法です。紡錘(ぼうすい)の形のように皮膚を切り、粉瘤を嚢腫壁ごと取り出します。
真皮を縫合してから、表層の縫合を行います。

メリット 粉瘤が大きくても手術が受けられます。
1週間程で抜糸ができます(箇所によって異なります)。
デメリット くりぬき法よりも線状のきずが長くなります。炎症があると手術は受けられません。

くり抜き法

小さな孔を作り、粉瘤の中身を出してから嚢腫壁ごと粉瘤を引っ張り出す方法です。
通常サイズの粉瘤の場合は、孔を作るだけで済むので縫合する必要がありません。
粉瘤が少し大きめの場合は、最小限の縫合を行います。
縫合しない場合は完治するまで、平均7~14日かかります。粉瘤が大きかったり炎症がひどかったりすると、さらに時間が必要になります。

メリット きずが最小限で済みます。炎症があっても手術が受けられます。
縫合しなかった場合、抜糸する必要がありません。
デメリット 粉瘤が大きいケースには向いていません。
その場合は、紡錘形切除法の方がきずの治りが早くなる可能性があります。

女性器にできる粉瘤について

女性はデリケートゾーン部の分泌腺が多いため、男性と比べて皮膚の老廃物が蓄積しやすく、しこりもできやすくなります。特に、女性は内股で歩く傾向が強く、下着の摩擦による影響も加わり、さらに角質が肥厚して老廃物も溜まりやすいです。
人体は皮膚の中に老廃物が溜まると、炎症を起こして外へ排出しようとします。にきびも、この流れで発生します。皮膚は、扁平上皮と呼ばれる組織から成っており、皮脂や垢、汗などの老廃物を常に排出します。
人間は老廃物を体内へ吸収することができないので、うまく排出できずにいると、炎症を起こして穴を作り、老廃物を出そうと働きます。
特に、デリケートゾーンは皮膚が薄いため、炎症が広がりやすく、腫れあがります。その時は痛みが強くなり、座ることも難しくなります。
当院では女性医師がデリケートゾーンの粉瘤治療も対応しますので、安心してご相談ください。

予防するには

皮膚の老廃物がうまく排出できない原因としては、皮膚のターンオーバーの遅れ、摩擦による角質の肥厚などがあります。
皮膚が肥厚すると分泌物の出る腺が塞がるため、さらに老廃物が溜まりやすくなります。粉瘤を予防するには、摩擦が起きにくい下着を履いたりピーリングを受けたりしながら、角質を除去する必要があります。
他にも粉瘤の予防法・対策について知りたい場合は、遠慮なくご相談ください。

手術の流れ

1診察・診断・治療へのご同意

問診や触診でしこりのサイズなどをチェックし、脂肪腫などの可能性がないかを確かめます。
患者さまによっては、超音波エコーなどの画像検査を受けていただくこともあります。
検査の結果をもとに、手術の方法やリスクなどについての説明を行います。
手術内容に同意をいただけましたら、手術を行います。

2局所麻酔・手術

患部に局所麻酔をします。麻酔が効いているかを確認でき次第、患部の切開を始めます。
粉瘤の中身と袋を取り出した後は、被膜組織が残っていないかなどをチェックし、最小限の縫合を行います。
縫合が終わりましたら、手術終了となります。

3術後の経過診察

手術後は出血する可能性があるため、入浴や飲酒、運動を控えていただきます。
次の日からはシャワーを浴びても大丈夫です。
手術後は、きずが治るまで1~2週間かかります。その間に経過観察を行うため、再度受診していただきます
(術前・後の状態によって、通院回数が変わることもあります)。
※粉瘤が大きかったり炎症がひどかったりする場合、血が止まりにくい薬を飲んでいる場合、ご自身で見えない場所にある場合は、手術後の1週間のうちに、何回か通院していただく可能性があります。

4病理検査に関する説明

手術で摘出した腫瘍は、病理検査で調べてから最終診断をつけます。
手術後から約1ヶ月後に、再度受診していただきます。その際に、病理検査の結果について説明します。
また再受診時には、きずがきちんと治っているかも確認します。

治療費用(3割負担の方)

露出部
 露出部
2cm未満
5,000円~6,000円
程度
 露出部
2cm~4cm
11,000円~12,000円
程度
 露出部
4cm以上
13,000円~14,000円
程度
露出部以外
 露出部以外
3㎝未満

4,000円~5,000円
程度

 露出部以外
3cm~6cm
10,000円~11,000円
程度
 露出部以外
6cm~12cm
12,000円~14,000円
程度
 露出部以外
12cm以上
25,000円程度

・ 上記手術費用以外に、初診料、再診料、処方料、薬剤料などが加算されます。
・ 手術は保険診療となります。上記は3割負担時の費用です。1割負担の方は上記の3分の1を目安にしてください。
露出部とは、半袖半ズボンで隠れない部位を指します。頭、顔、首、肘から手、膝から足、足底です。

・ 診療報酬の改定により金額が変更となることがあります。