形成外科医は創傷治療のプロフェッショナルです。
私共はこれまでも形成外科学会学術集会などの学会で創傷、熱傷の発表、報告を行ってまいりました。
・ガラス片で指を切った、転んで顔をけがしたといった縫合して創部を閉鎖する新鮮創傷の治療
・足のきずがずっと治らない、脛をぶつたけれどなかなか腫れが引かないといった慢性創傷の治療
創傷治癒の考えを礎にけが・きずを治療します。
やけど(熱傷)治療は私共の在籍した東京女子医科大学形成外科学教室において最も力を入れている診療・研究領域です。鹿児島市立病院は全国トップ3に入る全身熱傷の患者数を有しており、赴任時代は多くの熱傷治療に携わりました。
やけども病態と診断にて最善な方法で治療いたします。
けがの種類
擦過傷(創)、すりきず
転んで顔や膝を道路のアスファルトなどに接触し、摩擦などの外力で表皮や真皮の一部が削りとられた創です。通常は創面には皮膚付属器が残っているので治癒は速やかです。
治療は創傷被覆材貼付や軟膏塗布で浸潤療法を行い創部の上皮化を図ります。
挫創
走っていて転んで顔や膝の皮膚がぱかっと割れたなど、鈍的外力により生じる皮膚皮下組織の開放性損傷で、創縁は不規則で皮膚が剥離し、皮下の出血を伴います。そのまま放置するとガタガタの汚い傷跡となることがあるので、形成外科での治療が最適です。治療は局所麻酔下に挫滅した汚い組織を切除(デブリードマン)して縫合閉鎖します。
切創
鋭的な刃物やガラス片などで切った鋭的創傷です。創は、線状創となることが多いです。創縁は鋭く挫創と比較して組織の挫滅は少ないです。治療はナイロン糸で縫合閉鎖する一次縫合です。浅い場合はテープ固定にて閉鎖されることもありますが、滲出液ではがれて傷口が開いて、目立つ傷跡となることがありますので、可能な限り縫合を行うことが最適な治療です。
また弁状創といって、一定方向の斜めに入った鋭的創傷があります。U字やV字状の形状を呈し、末端が菲薄化した創です。治癒後に弁状部が盛り上がる変形trap door deformityが生じやすいので、薄い部分は切除して縫合するなど、形成外科的なテクニックを要する創傷です。
裂創
車椅子の金具で皮膚がはがれたなど、皮膚が強い牽引や圧迫により引き延ばされて、皮膚の弾力を越えて引き裂かれてできる創です。皮膚の萎縮した高齢者の前腕や下腿に生じやすいです。
周囲の挫滅は軽微です。治療は可能な限り縫合して閉鎖することですが、高齢者の場合は皮膚が菲薄して困難な場合もあります。その場合は被覆材などの湿潤療法を行い二次治癒にて治療します。
刺創
鉛筆の芯、包丁、ナイフ、釘、木片などで刺された創です。小さな傷口ですが、深部の組織が損傷している可能性があります。血管や神経損傷を伴う場合は、大学病院などでの治療をお勧めする場合があります。
木片や鉛筆の芯によるものは異物の残存に注意が必要で、エコー検査など画像検査を行うことがあります。また、錆びた釘を踏んでしまったなど、汚染創ではガス壊疽や破傷風などの感染に注意が必要です。
咬創
咬創はイヌやネコ、クマ、ヒトなどの動物によって咬まれて、組織が咬みちぎられて欠損してしまうことがあります。
創汚染が強いため、原則的には縫合閉鎖は行わず開放創として治療することが多いですが、受傷部位の大部分が顔である為、状況に応じてよく洗浄、デブリードマンを行った後、疎に縫合することもあります。
挫傷(外傷性えくぼなど)
机のかどに頬をぶつけて顔を打撲したなど、鈍的な外力によりますが、皮膚に損傷がなく内部の軟部組織・筋肉が損傷したきずを挫傷といいます。血腫や浸出液貯留を伴い、軽微なものは自然吸収し、きれいに治癒しますが、外傷性えくぼと呼ばれる陥凹性瘢痕を残すことがあります。陥凹性瘢痕が残存すると、これまで治療に難渋していましたが、脂肪移植や最近の雑誌PRSなどで新しい手術方法が報告されております。残存する外傷性えくぼが気になる場合は、一度当院までご相談ください。
熱傷、やけど
スープを手にこぼして水疱ができた、フライパンに手をぶつけたなどの熱傷、やけどは日常よく起こる創傷の一つです。
熱傷は深度によってⅠ度からⅢ度まで分類されます。Ⅱ度熱傷が深くなったりⅢ度熱傷にいたったりすると瘢痕形成(目立つ傷跡)となって機能的にも整容的にも障害を残すことがあります。小さい熱傷創でも強い痛みを伴うことがあります。やけどの治療は是非当院にご相談ください。
熱傷深度の診断
Ⅰ度熱傷
損傷深度が表皮にとどまる熱傷創を言います。発赤、軽度の腫脹を呈しますが、水疱形成はみられません。熱感や知覚過敏、ときに疼痛を伴います。これらの症状は数日以内に治まります。通常治療を要しないことが多いですが、皮膚の薄い小児の患者さまでは受傷直後は発赤のみであっても翌日水疱形成をきたすことがあります。
熱傷を受傷されましたら、形成外科を受診することをお勧めします。
Ⅱ度熱傷
浅達Ⅱ度熱傷
表皮全層と真皮乳頭層まで熱傷がおよび、水疱形成がみられるものです。水疱の下の創面は赤色を呈します。
有痛性で腫脹を認めます。皮膚付属器が残存しているので創治癒は2週間以内と早く瘢痕形成は見られませんが、色素沈着を残すことがあります。
Ⅱ度熱傷
深達Ⅱ度熱傷
真皮乳頭層よりも深く毛嚢や汗腺などの皮膚付属器も破壊されるため創治癒に3~4週間を要し、瘢痕を残すことが多いです。水疱を形成するⅡ度熱傷は、浅達性Ⅱ度熱傷の場合、水疱の下に膿瘍がたまり、深達性に移行することがあります。
水疱は受傷早期には絆創膏の役割を果たして疼痛の軽減になりますが経過によっては注意が必要です。深達性Ⅱ度熱傷の場合、組織の損傷が強く感染を伴いⅢ度熱傷に移行することがあります。
Ⅱ度熱傷は深くなり、きずを残すことがありますので早期の形成外科治療の介入が大事となります。
Ⅲ度熱傷
皮膚全層、時に皮下、筋肉にまで損傷がおよぶ熱傷創です。創面は蒼白~褐色の羊皮紙状を呈して、硬い皮状の壊死組織(焼痂)を形成します。自然治癒は焼痂の融解、脱落後の周囲からの上皮化です。外科的に焼痂を切除して植皮術を行うこともあります。Ⅲ度熱傷の場合、瘢痕形成をきたし傷跡が残りますので、Ⅱ度熱傷がⅢ度熱傷にならないような創処置、創管理やⅢ度熱傷を素早く治癒させて瘢痕を少なくするなど形成外科的治療が必要となります。