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顔面骨骨折

顔面骨骨折手術は形成外科が得意とする手術の一つです。大学病院にて沢山の顔面骨骨折の整復手術の執刀を行い、学会などで多くの発表、報告を行ってまいりました。
顔面骨骨折手術においても年齢、症例によっては日帰り手術が安全に行えると考えます。顔面骨骨折の治療は、顔面骨という顔貌の土台を修復するだけでなく骨の上にある皮膚軟部組織の修復を行う必要があります。
これは雑誌PRS(Plastic and Reconstruction Surgery )の生涯教育テキストにも重要項目として記載されております。これまで形成外科学会などで骨再建のみならず軟部組織の再建の重要性を報告してまいりました。

顔面骨骨折の種類

鼻骨骨折

鼻骨だけではなく鼻中隔軟骨も視野にいれた総合的な鼻骨骨折治療

・ 鼻骨骨折術後の修正手術
・ 鼻部内視鏡を用いた鼻部骨折手術
・ 陳旧性鼻骨骨折の再建

院長はライノプラスティー(外鼻形成)を専門としております。
外鼻は上1/3が鼻骨で、それ以下が鼻軟骨で形成されています。鼻骨は薄い骨で肘がぶつかるなどの比較的弱い力でも折れてしまいます。
鼻骨骨折には鼻中隔骨折(鼻の柱)や鼻中隔脱臼が合併していることも多くあります。その場合は骨の整復だけを行っても斜鼻、鞍鼻が残存して機能的整容的後遺症が残るケースが散見されました。鼻の高い欧米人は鼻骨骨折とともに鼻中隔が損傷するケースも多く、治療のアルゴリズムの報告がいくつもあります。当院では日本人にも適した鼻中隔軟骨も含めた鼻骨骨折の治療を行っています。

診断

症状に加えて、CT画像検査などを用いて診断します。

治療方法

鼻骨

ワルシャム鉗子という特別な鉗子で麻酔下に鼻骨を整復します。術後は鼻の中にタンポンガーゼを3~4日留置し、外鼻にはギプスを1週間装着します。鼻骨骨折のみであればこの方法で整復が可能です。

鼻中隔骨折

鼻骨の先端だけが骨折すると、この部分の直下は骨と軟骨の接合部(keystone area)といって、脆弱であるため、鼻背がペコっと下がって鞍鼻変形となることがあります。同部位の修復はワルシャム鉗子で整復を行っても後日また凹みが生じ、鼻骨骨折後の変形治癒となり修正術が必要となることがあります。
鼻を強くぶつけるようなけがをすると鼻骨だけでなく鼻の中にある鼻中隔という外鼻を支える柱も骨折や脱臼骨折することがあります。このような場合は鼻中隔の手術も必要となります。外傷直後は鼻の構造が非常に脆弱であり、経過をみながら鼻中隔の再建術を計画していきます。鼻中隔の再建には内視鏡を使用します。我々の行う内視鏡下での鼻中隔手術は外鼻の再建を目的としたものであり、一般的な耳鼻科で行われる鼻中隔矯正術とは少し異なります。

陳旧性鼻骨骨折

鼻骨骨折術後の変形の残存、鼻骨骨折を放置して変形が残存した症例が対象です。鼻が曲がったり(斜鼻変形)、陥没(鞍鼻変形)したりして整容的問題が生じたり、鼻の通りが悪くなり機能的問題が生じたりします。鼻中隔外鼻形成術という鼻骨と鼻中隔を修復する手術を行います。鼻骨の再建は鼻骨骨切り術を行います。鼻骨骨切りは外側骨切り、内側骨切り、トランスバース骨切りを組み合わせて行います。鼻中隔の再建は、脱臼した鼻中隔を整復したり、弯曲して鼻の通りの邪魔をしている部分を切除します。鼻をまっすぐにして鼻の通りをよくすることをゴールに治療を行っていきます。

頬骨骨折

頬の高まりを形成する骨です。体部と側方の弓部からなります。突出しているため転倒やスポーツ、交通外傷などで骨折することがあります。頬骨は眼の周りの一部であり、骨折にて眼の機能に障害をきたすことがあります。
体部骨折では、突出した頬骨が落ち込むように偏位することが多く頬が平坦になります。眼球運動障害が生じたり、頬部の知覚が鈍くなることがあります。
弓部骨折では、弓部の下にある側頭筋が押されるので口が開けにくくなります。顔の側方の陥凹が生じます。

診断

症状に加えて、CT画像検査などを用いて診断します。

治療方法

体部骨折

体部骨折の治療は、結膜から目尻にかけて1.5㎝程度の皮膚切開と口腔内を切開して手術を行います。皮膚は目尻を1.5㎝程度切開するだけで目尻のしわに沿ったきずのため術後も目立ちにくいです。骨折部を露出して鉗子などを用いて整復を行います。固定はチタンプレートか吸収性プレートを用いて行います。
術前に作製した3D模型を使用してオーダーメイドにプレートをまげて固定する方法を行うことがあります。最後に創部を閉創しますが、当院では軟部組織の吊り上げを行います。骨折手術では、どうしても顔のたるみを予防している靭帯を骨の上から剥がすため骨を整復してもたるんだ印象となるためです。術後、いつまでも腫れが引かない場合は、軟部組織の引き上げを行わず創部を閉鎖したことで顔が下垂していることが原因であることが多いです。

弓部骨折

弓部骨折は側頭部の毛髪内を切開して骨を挙上します。プレートの固定は通常必要ありません。局所麻酔で行うこともあります。
術後は複視や知覚障害が残存することがあります。これは受傷時の組織損傷の具合で決まることが多いです。完全に整復しなくても日常生活で忘れるまでに改善される方がほとんどですが、全く改善されないケースもあります。

眼窩骨折

眼窩底骨折、眼窩下壁骨折
眼窩内壁骨折

眼に拳、膝、ボールなどが当たり眼球を支える眼窩骨が骨折します。物が二重に見える、眼が窪む、頬から上唇が痺れるなどの症状が生じます。受傷後に嘔吐することもあります。
鼻をかむと骨折した部位より眼窩に空気が入って腫脹が強くなるので、鼻をかんではいけません。

診断

症状に加えて、CT画像検査などを用いて診断します。近隣眼科にて視力、眼球運動検査なども必要となることが多いです。

治療方法

骨折で眼球を動かす筋肉が挟まれている場合(小児に多い)は緊急手術となりますので近隣の施設にご紹介することがあります。通常は受傷から1週間程度で手術の可否を決定します。
眼の中(結膜)を切開して眼窩部の骨折に至りますので、原則お顔にはきずはつきません。
当科ではシミュレーションソフトを用いてソフト上で骨折部を整復したモデルを使用したオーダーメイド手術を行うことが多いです。はまり込んだ脂肪や筋肉をもとの眼窩内に戻すように整復していきます。この整復作業が一番重要です。その後、吸収性プレートと鼻内から採取した鼻中隔軟骨を用いて骨折した眼窩を再建します。術後は再度腫れますので眼球運動のリハビリなどを行いながら回復を待ちます。
眼窩骨折は落ち込んだ脂肪や筋肉の整復が一番重要ですが、受傷時の筋肉や脂肪などの損傷の程度や眼窩組織を支える靭帯の損傷の具合で術後の成績がかわってきます。一度壊死した組織は再生することはないので眼窩骨折の手術療法は、眼が動きやすい環境を作る手術と考えていただくのがよいかと思います。

上顎骨骨折

上顎骨骨折は顔面の中央部の骨の骨折です。咬み合わせに関係する骨で、骨折にて咬合不全(歯のかみ合わせの障害)が生じます。

診断

症状に加えて、CT画像検査などを用いて診断しますが、同骨折を認めた場合は近隣の入院可能な施設にご紹介します。

下顎骨骨折

下顎骨骨折は顔面の下部の骨の骨折です。顔面骨で唯一関節を有する骨です。 同部位の骨折にて圧痛、腫れ、皮下出血、開口障害や咬合不全が生じます。

診断

症状に加えて、CT画像検査などを用いて診断します。

治療方法

手術は良好な咬合(咬み合わせ)の回復を目指したものになります。 オトガイ部の骨折は口腔内から切開し整復固定が可能です。
角部や下顎枝部骨折は頸部の皮膚を切開してアプローチすることが多いですが、咬筋上から骨へ到達するhigh submandibular transmassetric approachを用いて比較的安全に大きな視野で手術することが可能となりました。
関節突起部の骨折手術においてはTransmasseteric Anteroparotoid アプローチにて整復固定を行います。当院ではフェイスリフトの切開線で行うことで、従来よりきずが目立ちにくく、安全な方法にて行っております。
いずれの骨折もギプスの役割として上と下の歯を固定する顎間固定を1~2週間程度行い、創部の安静を図ります。